2005.07.06 13:00 安田造船出航・下田港へ向けて回航
17:00 下田港入港
2005.07.07 06:20 下田港出航・和歌山県勝浦港へ向けて回航
14:30 和歌山県勝浦港入港
2005.07.08 06:00 乗船開始・出航・指定海域待機
07:00 スタートフィッシング
15:00 ストップフィッシング・17:00までに帰港
2005.07.09 06:00 乗船開始・出航・指定海域待機
07:00 スタートフィッシング
14:00 ストップフィッシング・16:00までに帰港
19:00 表彰式・パーティ
2005.07.10 10:00 和歌山県勝浦港出航・ペラガスへ向けて回航
18:00 マリーナペラガスに帰港


7月6日(水) 晴れ 波高1m

 回航に付き合って貰うために、飛行機で東京へ来るしんしあさんを迎えに羽田空港まで行き、合流してサバ味噌煮定食を食べたのち京浜島の安田造船へ向かう。午後1時丁度に出航したのだが、安田のスタッフが全員勢揃いで見送ってくれた。進水用のシャンパンまで用意してくれていた彼らの粋な心意気に感謝しつつ、太平洋高気圧ばりばりのおだやかな海を東京〜横浜〜横須賀〜久里浜と走って下田まで丁度4時間のクルージングだ。この時に僕は初めてバートラムでロングに出たのだが、巡航25ノットで走ってその乗り心地の良さにびっくりしてしまった。

 下田港では下田ボートサービスの浮き桟橋に着けて、そこで紹介して貰った温泉宿でのんびりと宿泊。夜の部では、寿司屋にカラオケスナックにと元気いっぱいに飲み歩いて、思った通り翌朝は2人して後悔(爆)。


7月7日(木) 曇り 波高2m〜3m

 朝5時半の目覚ましで起き出し、船に移動して6時20分に下田港を出発。ここから御前崎までは海が悪い難所その1で、ほぼ真正面の波2mを我慢しながらひた走る。波のピッチが長いため速度を落とすことなく巡航22ノットだが、何度か「来るぞ!」という波に突っ込んでも船は何事もなかったかのように静かに走り続けた。この波切りの良さには本当に感動で、バートラムを選んで本当に良かったと思えた。難所その2の熊野灘ではうねり3mまで上がるが見なかった事にして、結局約200マイルを8時間強で走り切った。

 午後3時前に勝浦港に入って接岸して給油。緊張と疲労で2人ともさすがによれよれになったが、JRで5時間掛けて辿り着いたAさんと合流してようやくメンバー全員集合だ。皆でホテル浦島に入り、風呂してビールして今日も飲んで騒いで撃沈。明日は頑張ろう!


7月8日(金) 曇り 波高1m〜2m

 多少ヨレってはいるものの、気合いを入れ直してトーナメントのスタートだ。潮岬と勝浦のすぐそばに冷水塊があるために、潮の当たり方が例年よりやや浅い。今年はディープVのバートラムでしかも一番深いところにスルハルの水温センサーが付いているので、表層水温に惑わされずに温度が取れるのでとても安心だ。この理屈が分かっていない人は、午後になってからトンチンカンな水温で判断を誤ることになる。

 今日の狙いはただひとつ潮岬南南東沖5マイルの瀬で、行ってみて潮がなかったら更に5マイルほど南下した穴ボコや他の瀬を狙わなければならない。例によってスタートフィッシングをやり過ごしてからゆっくり出て、一番後ろから巡航23ノットで走っていたら、いつのまにか前を行く船団に追いついてしまった。幸いにも近いポイントに潮があったので8時前から流し始めたが、無線でもあちこちでヒットコールが連発される。そこよりも沖に出ると水温が下がってしまうので、1日目はやや岸寄りのポイントを重点的に攻める事にした。どうも表層だけの潮が漂っているようで、丸1日真面目に流しての釣果は、残念ながらシイラ1本のみだった。

 ストップフィッシングのあと勝浦へ向けて走っているとき、目の前で競技終了間際にカジキを掛けた船がファイトしていた。ちょっと潮上でGPSのマークを叩いておき、確かに水温も水色も安定しているので、明日はこちらの瀬を狙おうと心に決めた。

 勝浦に戻って風呂してから街に出て、いつもの蕎麦屋という看板の居酒屋でサンマの押し寿司を食べる。ここで讃岐人のAさんが「とりあえずうどん!」と注文したのが大ウケで、ああ今夜も酒盛りは延々と続くのであった(爆) 運転手はさすがにヘバっており、宿に戻ってから一足先に気絶。


7月9日(土) 曇り時々大雨 波高2m〜3m

 潮もあるし魚もいるから、今日は絶対に釣ってやると心に誓ってスタートフィッシング。昨日決めたポイントの潮下へ一直線で走るが、途中で大雨になり視程が100mほどになる。速度を落としてレーダーのレンジを絞り上げ、前のワッチは2人に任せて運転手はレーダー画面を睨んで走り続けた。今日は海が悪く波高2mほどの嫌な風波で、潮と風が完全に同じなのでうねりが大きい。

 昨日1日のヒットパターンから、朝の早いうちとストップフィッシング直前が勝負どころだと思い、狙った瀬にひたすらへばりつく。昨日から今日に掛けて、すぐ前や隣の船がカジキを掛けるというパターンが続いているのだが、こちらはチェイスひとつないというのは、ルアーや流し方やポイント選択ではなくて、完全な運だけの問題だと判断した。

 気合い100%で流し続けるが、リールが鳴かないままに時間ばかりが過ぎてゆく。今日のストップフィッシングは昨日より1時間早い午後2時だが、昨日のゴールデンタイムもまた午後2時ごろだったので、潮が間に合えばいいなとそればかりを気にしていた。それでも、僕の予想していた通り、午後1時くらいからあちこちでヒットコールが出始め、いよいよショータイムのスタートだ。最後の1時間を狙ったポイントでしかもきっちり上り潮で流すために、2時間ほど前からコースを変えて潮下へ降りていた。文字通り、準備万端だ。

 いまここで書いても信じて貰えないかもしれないが、僕には絶対にカジキをヒットさせるという自信があった。しかも、食わせるのは左舷ミッドかセンターのどちらかのルアーだということもだ。根拠はまさに直感的なものだけれど、カジキ釣りをしている人にはこの"人智を超えた"部分が大きいというのは分かって貰えるだろう。それでも、わざわざ荒れたポイントをしつこく何度も上り潮で攻める運転手に、他の2人はきっとうんざりしていたことだろうと思う。

 だが、しかし、

 来た!

 狙い通りの午後1時半に、これもしんしあさんが狙ってセットした、昨日よりも少し短く取ったセンターに入れた428須崎スペシャルにカジキのヒット!これはまさに8年前の土佐ビルの時と全く同じ、最終日ストップフィッシング直前での大当たり。本当なら無線では「マーリン・ストライク!」と叫びたいところなのだが、地域性に合わせて「カジキ・ヒット!」だ。サメの可能性がほとんどないのに「魚種不明」だけは言いたくないと思う。誰だって、エソと真鯛のアタリの差くらいは分かるでしょう?

 うちは3人のチームなのでルアーは4本しか流していないから、残り3本を速攻で回収していよいよファイト開始だ。今日のアングラーはジギングの達人のAさんなので、出来る事なら早めの勝負に出てしまいたい。海も悪くて波高2mの向かい波に風速10m近い風で、ギアをバックに入れただけで盛大にアフトから波をかぶる。間の悪いことに、いきなり土砂降りの大雨まで降ってきやがった。

 今回うちは全部が50ポンドのタックルで、しかもかなりのハイドラグ設定にしてあった。竿がビスケインだしリールも糸も完璧だということと、人数が少ないので短時間勝負で上げてしまいたいというのがその理由だ。1日中リールを巻くのが趣味というAさんがアングラーということもあり、糸の角度も悪くないのでどんどんバックで詰めてゆく。途中で何度か横っ飛びされたが、初めて扱うバートラムはまるで手足のように言うことを聞いてくれるのだ。デッキでは頭から何度も波をかぶったようだが、FBはドライなので気付かない事にしておく(笑)。実は、追い込んでいる途中でハイビルジの警報が鳴り響いたのだが、これは単なるポンプのスイッチ入れ忘れで、下に聞こえなくて本当に良かった。

 潮と風がかなりキツく、魚は左前方にいるのに糸は右に向いているということが何度かあった。タワー上で操船していれば楽勝で追い掛けられるだろうが、FBの目線の高さではこれになかなか気付かない。糸とは違う方向にアスタンを掛けなければならないこともあったが、こればかりはキャプテンを信じて貰うしかない。

 3度目のランのあと、魚がいきなり停まる。これはヤバいとぞ思いながら、糸がほとんど水平に出ているので、アングラーには気の毒だけれどバックに入れっぱなしで追いかける。ダブルラインが上がり、そしてリーダーが見えたところで一気に上げにかかった。運転手がデッキに飛び降りてアシストし、しんしあさんが乾坤一擲のギャフを入れる。少人数の悲しさで、このあと魚をデッキに引っ張り上げるのにえらく苦労したが、それでも何とかやっつける事が出来た。ストップフィッシング5分前、無線の発信制限が掛かっている静けさの中で、キャプテンの権利のランディングコールを入れる。

「22番、チーム・アクエリアス。ただいま、カジキをランディングしました!」


 この快感、一度やったらやめられないワ(^-^)

 港に帰って検量すれば、なんと158.5キロ・3m20センチのデカさ。デッキに横たわった姿から120キロは越えているなと思ってはいたが、初めて自分よりも大きな魚を釣ったのが心底嬉しかった。タックルチェックをクリアして記念写真を撮る頃には、台風並の土砂降りと風でほとんど前が見えない状態。3人ともへろへろになりながら船を停めて燃料を入れ、ホテル浦島へ戻ってようやく人心地がついた。

 普通は表彰式前に順位が発表されるのだが、今回は大雨の影響で順位掲示板が出ておらず自分の成績が分からない。表彰式ではまず総合3位から呼ばれたのだが、その最初のチームのポイントが僕らよりも低かったので、その時に初めて自分の入賞を知った。「2位、チーム・アクエリアス」のコールに、なぜか会場がどよめいた。東京から来たチームが、いきなり入賞してしまったからだろうか。それとも、昔の名前を覚えていてくれた人がいたのだろうか。

 表彰式のインタビューでファイトタイムを訊ねられ、しんしあさんがぼそっと「25分です」と言ったらまた会場からどよめきが起こった(笑)。無線で入れたランディングコールと、このファイトタイム25分発言は、僕らの誇りとしていつまでも忘れないだろう。

 その後は、例によって大へべれけ大会で記憶ナシ(爆)。


7月10日(日) 曇り 波高3m〜6m〜3m

 今日は高松へ帰る日だが、思った通り潮岬は大荒れだ。灯台の電話情報を取れば「うねり3・なみ3」。これはつまり波高6mあるということ。全艇揃って風待ちをしていたが、午前10時ごろにトヨタ軍団が潮岬を越えたという電話が入った。行ったのはなんとポーナム37と28(!!!)であるから、この情報に僕らも全員出発することにした。出てみればやはりかなりの波高で、13ノットでえっちらおっちら山登り。こんな中、なんでポーナム28が走れたんだろうか。ネジが2〜3本抜けている人は確かにいるが、あの船は完全に壊れた人が乗っているのだと思う。

 うんざりの潮岬を越え、やっぱり波の高いすさみを過ぎ、日御碕を越えたあたりでようやく波が収まった。ここでミキシングエルボーのトラブルが出てしまいスピードダウンを余儀なくされたが、応急処置をしてトータル8時間丁度で高松へ帰港。エンジンルームも人間様も潮だらけのよれよれだが、大きな怪我もなく無事に帰って来れて一安心だ。

 うん、確かに3人ともよれよれだけれど、僕らのこのトーナメント遠征は、誇りに思って良いんじゃないか。

 この魚は「釣れた」んじゃないよ。「狙って釣った」のだから。


 勝浦港でようやくクルー全員集合。今回、僕はカメラを忘れてしまい、しんしあさんが撮ってくださいました。

 トーナメント1日目のショット。いつ写されたのか全く分からなかった。実は案外、目が恐い。

 立派なトーナメンターのコクピット。マーリーブラザーズのチェア、バケットハーネス、ビスケインのロッド。

 貴重なファイト中の写真。こうやって見るとものすごくカブっているが、実際もやっぱりものすごくカブったらしい。

 やっとこさ引っ張り上げたクロカジキとアングラーのAさん。3人ともパンツまでずぶ濡れ。

 お馴染みのショット。画質が悪いように見えるが、これは大雨の中なのだ。

 嬉し恥ずかし表彰式♪